somnambulism ~夢生人~

夢と現実ないまぜの日記です

真由花

f:id:mick19:20220313150530j:plainキャメルのスゥエードブルゾンに、薄いデニムのミニスカート、黒いロングブーツを履いた彼女を見かけた時、私は思わず2度見してしまった。
一度目は、この時代にアムラーとは。
二度目は、だが、それがいい
バーでも行かないかと声をかけてみると、OKの返事。早速行きつけのバーに向かった。

お菓子が詰め込まれたクリアボックスが壁一面に並んだそのバーで、彼女の名前を聞いた。
『マユカ』彼女はそう答えた。
「ふーん」私は場つなぎの返事をしながら、クリアボックスを目で追った。
壁一面のお菓子達はあいうえお順に整然と並べられている。
真由花。見つけた。
紫色の個包装に包まれた、和の装いのしっとりしたクッキーであった。
クリアボックスから二つ取り出し、彼女に差し出した。
彼女は自分の名前が書かれたお菓子を見て、『うち、和菓子食べられへんねん。』と言い、クリアボックスからポテトチップスうすしおを取り出した。彼女の下顎に吹き出物ができているのを見つけた。
仕方なく私は、マユカを見つめながら、真由花をねぶり食べた。
彼女は無反応で、ポテチを無心に頬張っていた。吹き出物が大きくなっていた。
その後は当たり障りのない話をして、連絡先も聞かずに別れた。

無駄な時間を過ごした。
私の手に残ったものは、彼女が食べなかった真由花一つだけだった。
ジャケットのポケットにそれを入れ、店を出た。
外はまだ明るかった。